【豆知識】電子国家エストニアで誕生した電子契約「e-sign」を解説

2020年07月13日(月)

e-signとはどんな電子契約システムなのか?

地中海に面したバルト三国の一つとして知られるエストニア共和国。自然が豊かでお城や教会など歴史的な建物が立ち並ぶ観光都市であると同時に、IT化が進み数多くの企業が拠点を置く「電子国家」としても評判が高いです。今回はそんなエストニアで生まれた電子契約「e-sign」の詳細についてご紹介します。

e-signとは

e-signはブロックチェーンの技術を活用した電子契約の無料プラットフォームです。ブロックチェーンとは近年評判となっているビットコインの取り引きに使われる技術で、簡単に言えば従来のような1台のコンピュータで管理されているデータベースにアクセスする方式ではなく、複数のコンピュータでデータを管理していく技術で、「分散型台帳技術」とも呼ばれています。

e-sign上に契約書をアップロードして、それに電子署名を付加することで、瞬時に相手方にそれが送信され、法的に効力がある電子契約を結ぶことができます。

日本では2019年に株式会社blockhiveがe-signの提供を開始。電子署名を行うための「デジタルID」についても無償提供します。

e-signについて他社の電子契約サービスとの違い

他にも電子契約サービスは数多くあるのですが、e-signの特徴は「高い本人性・非改ざん性を半永久的に担保できる」、「対応できる電子文書が幅広い」という2つが挙げられます。

まず、ユーザーは公的本人確認書類(免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)を登録し、デジタルIDを作成します。デジタルIDは電子署名を付す印鑑のようなもの。身分証明書を確認した上で発行されるので、高い本人性を担保し、なりすましを防ぐことができます。

電子文書は「いつ・だれが作成したものか?」を証明するのが非常に難しく、簡単に改ざんすることができます。e-sign上に文書をアップロードすると、即座にハッシュという暗号が生成され、それがブロックチェーンに記録されます。そのため、電子文書が作成された後に手を加えられたかどうかが誰にでも、すぐに知ることが可能です。しかも従来の電子署名は効力が5年程度しか定められていないケースが多かったのですが、e-signでは半永久的に非改ざん性を担保することが可能です。

e-signを通じて電子文書をやり取りすることで、なりすましや改ざんが極めて難しくなり、かつ契約書はもちろん、稟議書や議事録など、さまざまな電子文書にデジタルIDを使って電子署名を行うことができます。

e-signを導入するとどうなるか。

では具体的にe-signを導入すると私たちのとってどのようなメリットがあるのか?事例を紹介します。

e-sign発祥の地エストニアでは人口が減少傾向にあり、少ない人数で行政サービスを提供しなければいけないという課題を抱えていました。そこで導入されたのが「デジタルIDカード」です。

国民一人ひとりに番号を割り当てて記載したIDカードを使えば、物理的な身分証としてはもちろん、オンライン上でも自分の身分を証明することが可能です。これを活用して行政サービスのデジタル化を政府が推進し、今や行政手続きの99%をデジタルでできる体制が整っていると言われています。市民はわざわざ役所に足を運んで書類を作成する必要がなく、パソコンなどの端末で自宅に居ながらにして行政手続きを行うことができ、評判も上々だそうです。

こういった体制が構築できるのも、高い本人性と非改ざん性が担保されているからなのです。そして、IDカードを使った行政サービスのデジタル化は、政府や行政機関とGovTechと呼ばれる、政府や行政が抱える課題に対してIT技術によって解決を目指す民間企業との協業によって実現しました。

エストニアで成功した「行政サービスのデジタル化」を推進しようとしている自治体が日本にもあります。石川県加賀市は先ほど登場したblockhive社と行政サービスのデジタル化に向けて協業体制をとり、e-signの導入を進めています。

加賀市では少子化や転出による人口減少が続いていく現状があり、限られた財政と人的リソースのなかでいかに充実した行政サービスを提供していくかが課題となっていました。

日本でも「マイナンバーカード」というエストニアのIDカードと同様のハードがあります。しかし、それが活用されている事例はあまりありません。未だに多くの人が役所に行って書類を書いて手続きをしているという現状があります。

そこで、加賀市ではblockhive社と手を組み、マイナンバーというハードを活用し、スマホ上でも公的本人確認書類と同等の本人性を担保できるデジタルIDアプリ「xID」の普及を推進するとともに、自宅や職場からでも行政手続きが行えるソフト面での仕組み構築を行っていく方針です。

これによって行政機関の業務効率化や市民生活の質の向上など、さまざまな効果が期待されています。

まとめ

ブロックチェーンの技術を応用し、高い本人性と非改ざん性を実現できるe-sign。これが普及すれば、ありとあらゆる文書をオンラインでやりとりでき、書類の提出や本人確認、書類の保管などにかかる時間やコストを大幅に削減することができるでしょう。

契約締結や手続きなどの手間を大幅に削減する電子契約が多くの企業や行政機関に導入されれば、サービスの質やスピードが向上し、業務効率が改善され、私たちの生活がより豊かなものとなるでしょう。電子契約システムは官民問わず、間違いなくこれから浸透していくテクノロジーであると考えられます。

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