契約書の歴史と必要性

2019年10月15日(火)

契約書というとどんなイメージがありますか?「面倒くさい」「いちいち署名押印する必要あるの?」と思われるかもしれません。そう感じるのは実は日本独自の商習慣の歴史や、日本人独特の価値観が関係しているのです。日本と諸外国との契約書に関する歴史や考え方の違いという、非常に奥が深くて、面白い背景があります。

また、昨今ではこれまでのやり方が通用しなくなってきているほど、契約書の重要性が高まっています。その理由や契約をスムーズに交わすコツも伝授します。

そもそも契約とは?

まずは「契約」というものがどういうものなのかという根本的なところから触れていきましょう。契約とは当事者同士がお互いに意思表示をし、それが合致することによって成立する法律的な行為です。もっと簡単に言えば、法律的で守ることが義務付けられている約束です。

商品やサービスの売買、雇用、物の所有など、さまざまな事柄について契約が結ばれます。たとえばお店でしたら「うちからは商品を提供しますので、その対価としてお金を支払ってくださいね。」という契約をお客さんと結ぶことで売買が成立するのです。会社でしたら「あなたを正社員として雇います。その代わり会社の規則に従って働いてくださいね。」という契約を社員と結んでいます。このように、契約とは私たちの身近なところで、日常的に行われています。

「契約」という言葉を聞くと、「契約書が必要なのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、必ずしもそうではありません。民法では特定のものを除いて契約書を契約成立の必須要件とはしていないのです。したがって、口頭による合意などでも契約が成立することになります。

前述のとおり、物を売買するのは典型的な契約と言えます。しかし、コンビニやスーパーなどでいちいち契約書に署名押印した上で商品を購入するなんていうことはありません。しかし、仮にお客がお金を支払わないまま商品を持ち出せば窃盗罪などで罰せられますし、逆にお店側がお金を受け取ったにも関わらず商品やサービスを提供しなければ詐欺罪に問われることになります。契約書がなくても法律的にはちゃんと契約が成立しているのです。

特に日本では口約束による契約が多い傾向があります。2019年の夏に吉本芸人の闇営業問題がメディアで大きく報じられました。このときに、吉本興業と所属芸人の間に契約書が交わされていなかったということが根本的な原因と捉えられたのです。契約書がないから、ギャラの配分をはじめ、会社が都合の良いように芸人を支配できる。契約書を交わしていないから、芸人が搾取され、闇営業や直営業に走らざるを得なかったのではないか。こうした意見を、多くの芸人がテレビなどのマスメディア、あるいはSNSなどで発信しました。

しかし、前述のとおり契約は口約束でも成立します。道義的に正しいかどうかは別として、吉本興業が所属芸人と書面による契約を交わしていなかったとしても違法ではなく、契約は有効なのです。

それ以外にも、下請け業者が元請業者と契約書を交わさずに仕事を受注する、労働契約書に署名押印をせず新入社員が会社に就職する、比較的高価な商品やサービスも契約書を交わさずに購入できるというように、口約束でも成立する契約の例は数多くあります。

なぜ日本ではそれが通用してきたか?海外と日本の契約書事情と歴史的背景

では、なぜ日本では口頭による契約が多いのか?それには歴史的背景や日本人特有の価値観があると考えられます。

日本の商取引では長らく信用が重視されてきたという歴史があります。もちろん、昔から納期に間に合わなかったり、代金が支払われなかったりという問題はあったでしょう。しかし、そういったトラブルが発生しても、当事者同士の話し合いで解決がなされてきました。事実、日本国内で取り交わされている契約書には「問題が発生した場合は当事者同士が誠意をもって協議し解決する」という文言が入っているケースが多いです。

一方で、海外はリスクをしっかりと考慮した上で書面にもとづいて契約を交わし、万が一トラブルに発展した場合はすぐに裁判が行われる傾向があります。アメリカが訴訟大国であるのは周知のとおりで、国民1人あたりの裁判件数は日本の10倍以上。イギリスやフランスでも5倍、韓国は3倍というように、諸外国では日本よりも格段に訴訟が多いのです。万が一トラブルが発生して相手に訴えられるリスクを考えて、契約書をしっかり交わす文化が根づいています。

アメリカでは結婚する前にあらかじめ離婚などの条件を定めた「婚前契約書」を取り交わす夫婦が多いです。これをどう感じますか?「離婚を前提に結婚するの?」「相手のことを信用していないようで嫌だな」と嫌悪感を覚える方も多いでしょう。これが日本人と外国人の考え方の違いかもしれません。日本人は信用に重きを置いているからこそ、契約に戸惑いを感じます。しかし、アメリカでは信用ももちろん大切にしますが、それ以上に契約で明確なルールを決め、万が一のトラブルになったときに冷静に話し合えるように備えるのです。

また、日本人は契約書を「形式」として捉える傾向があります。契約書に署名や押印を求められた際に「形式的なものですから」と言われた経験はありませんか?ひょっとしたら逆にお客さんや社員にそう言って契約書にサインしてもらっている方もいらっしゃるかもしれません。

信用できる会社あるいは人が相手だと、「形式的なものだから」「わかりきってることだから」と契約書をよく読まないうちに署名や捺印をするというケースもあるかと思います。

信用を大切にし、実際の取引や慣例を重視する。あくまで契約書は形だけのもの。そういった価値観が、日本の長い商取引の歴史の中で根付いてきたのです。

前述の吉本興業の例も根底にはそういった価値観やそれに基づいた考え方があったのではないかと考えられます。吉本興業側は「わざわざ契約書を出さなくても芸人さんたちは会社のルールを守ってくれるだろう」、所属芸人側は「吉本は大企業でしっかりしたプロダクションだから契約書を交わさなくても大丈夫だろう」「芸人として修行をさせていただいている」というお互いの信頼関係があったからこそ、これまで契約書がなくても大きな問題にはなってこなかったのではないでしょう。また、「芸人の世界はこんなもんだ」という暗黙の了解も吉本興業の社員、所属芸人双方に根付いていたのかもしれません。

日本人の考え方、諸外国の人たちの考え方。どちらが良い悪いはありません。それぞれの国の歴史や人々の価値観によって契約書の在り方も大きく変わってくるのです。

なんで契約書が必要なの?

海外と比べて書面による契約が厳密に行われてこなかった日本ですが、近年では契約書を交わすことが重要視されてきています。そもそもなぜ契約書が必要なのか?その理由を考えていきましょう。

契約書の目的は債務不履行を防ぎ、仮にそれが起こってしまった際に適切に対処できるようにするためです。

「債務」というと借金のイメージが強いかと思いますが、何もそれだけが債務ではありません。もともと、債務という言葉には「特定の者が他者に対して一定の行為をする、あるいは物を譲渡したりすべき法律上の義務」という意味合いがあるのです。たとえばお店にとってはお金を受け取る代わりに商品やサービスを提供することが債務となります。逆にお客さんは商品やサービスを受け取る対価として代金を支払う債務が発生するのです。

お店側が代金を受け取ったにも関わらず商品やサービスを提供しなければ債務不履行にあたります。商品やサービスを受け取ったにもかかわらず代金を払わなければ、お客さんが債務不履行となってしまうのです。

しかし、何が債務不履行で何が債務不履行でないかはわかりにくいもの。たとえば、災害でお店が被害を受けて、債務を履行したくてもできない場合などは債務不履行にはあたりません。

また、債務不履行のなかにも、債務の履行が遅れる「債務遅滞」、債務の履行が不可能となってしまう「債務不能」、債務が履行したもののそれが不十分である「不完全履行」という種類があります。

契約書には「何が債務であるか?」「どんな条件(サービスの内容や支払いの期限)が債務履行となり、なにが債務不履行となるのか?」を明記します。だれが?どうやって?どこで?なにを?いつまでに?を明確にすることで、スムーズな取引ができるようになるのです。

また、契約不履行が発生した場合には、債務履行や契約解除、損害賠償を求めることができます。その際に契約書があれば、相手方は言い逃れができません。「書面ではこう書いてあるでしょ?」と主張することができるのです。

スムーズな取引を行い、トラブルが発生したときの証拠となる。こういった理由で、契約書の重要性が高まっているのです。もちろん、相手を信用するし、しっかりと約束を守る。口約束だけでもスムーズな取引が成立していたのは、日本人に高い道徳観があったからこそです。しかし、それ故に契約不履行が発生してもなあなあで終わってしまったり、適切な対策がとられなかったり、詐欺などの犯罪が発生するといった問題があったのも事実です。

日本の契約書がない取引は海外から「ガラパゴス」と揶揄されるほど特殊なものです。「契約書はありません」は海外企業に通用しません。日本企業にとっても万が一のときに訴えられて裁判に負けてしまうリスクが高くなるというデメリットがあります。グローバル化や価値観の変化に伴って、今後ますます契約書の重要性が高まるのは間違いないでしょう。

紙の契約書のデメリット

契約書というと、紙にプリントアウトされた書面にペンで署名をし、ハンコを押して、目の前にいる相手方に手渡す、もしくは封筒に入れて郵便局で郵送する。そんなイメージがあるのではないでしょうか?昨今、契約書の重要性が高まっているのは事実ですが、紙の契約書にはメリットも少なからずデメリットがあります。

印紙が必要

契約書には印紙税が課されます。1万円超え10万円以下のものは200円、10万円超え50万円以下のものは400円、50万円超え100万円以下のものには1,000円というように、契約金額に応じて税額が決められ、必要な額の印紙を購入して貼付することで、国税庁に印紙税を収めるという仕組みです。ちなみに契約金額が1万円以下の契約書には印紙税はかかりません。詳しい税額が知りたい場合は国税庁のホームページをご覧ください。

たとえば、2千万円の不動産を購入する場合、「1千万円超え5千万円以下のもの2万円」に該当するので、契約書を交わすだけで2万円の印紙税を支払う必要があります。

郵送する手間や費用がかかる

紙の契約書を郵送する場合は「契約書を受け取る・プリントアウトする」「署名・押印をする」「契約書を封筒に封入する」「郵便局やポストで投函しに行く」という作業が発生します。

特に手間なのが契約書を送る作業。署名捺印が終わったら三つ折りにして封筒に入れなければいけません。送付状を作成したり、封筒に宛名を書いたりするのも手間です。

さらにわざわざ郵便局や郵便ポストに投函しに行かなければいけません。そのための人件費や時間を考えると、損失は少なくないでしょう。

契約者の気が変わってしまうことがある

契約書が相手方に届くまでに1~2週間ほどかかります。契約書が交わされたら、債務を履行する責任が生じます。双方に「契約書を交わしたからしっかりと約束を守らなければ」というある種のプレッシャーが生じるものです。

しかし、契約書が届くのが遅くなると相手方の気が変わる場合もあります。「まだ契約前だから」という気持ちが芽生え、契約内容を変更してきたり、キャンセルしてきたりする可能性も少なからずあります。得られるはずだった利益が、契約書が届くまでにタイムラグが生じることで得られなくなるということもあり得るのです。

探すのに時間がかかる

相手方や会社の人から契約の内容や条件について問い合わせがあって、多くのファイルや書類の中から契約書を一生懸命探して見直し、やっとの想いで回答したという経験をされた方も少なくないでしょう。

紙の契約書は後から内容を確認するのが大変です。整理整頓されていなくて契約書を紛失してしまったり、知らずしらずのうちに廃棄してしまったりということもあり得ます。

電子契約のメリット

相手に契約履行をさせやすくする、債務不履や訴訟など万が一のトラブルのときに証拠となるなど、契約書を交わすメリットは数多くありますが、その一方で紙の契約書には上記のようなデメリットも存在します。

契約書を電子ファイル化して、インターネットを介してやり取りする電子契約であれば、従来の紙の契約書を交わすことで生じるデメリットをすべて解消することができます。

コスト削減が可能

現行法では印紙税が課せられるのは紙の契約書のみ。電子契約は印紙が不要なので、たとえ契約金額が1千万円でも1億円でも、印紙税は一切必要ありません。契約書をプリントアウトするためのコピー用紙代やインク代、プリンタや複合機のランニングコスト、封筒代、送料、そして作業にかかる人件費も削減することができます。

手間がかからない

紙の契約書で契約を交わす場合は持参するか郵送する必要があります。宛名書きや送付状作成、封入など、煩わしい作業が意外と多くあります。また、郵便局や郵便ポストに出向いて投函しなければならず、これも結構時間がかかります。

電子契約であれば、こうした手間は一切不要。パソコンを使って簡単な操作をするだけで契約を交わすことが可能です。これまで契約書に費やしていた時間を有効活用することで生産性の向上や収益アップにもつながります。

すぐに契約できる

電子契約の場合は相手方と即座に契約を結ぶことができますので、契約条件の変更やキャンセルなどが発生しにくくなります。「やっぱりやめた」ということが少なくなるので、損失を防ぐことにつながります。

後から確認しやすくなる

電子契約をデータベース化することで、後からでもパソコンなどで簡単に契約書の内容を確認することができます。問い合わせがあった際も、ファイルを探して契約書を取り出して、また元に戻して…という煩わしさもなく、スムーズに回答することが可能です。

システムによっては、契約の締結状況や相手方の確認状態、有効期限などを確認することもできます。

非改ざん性が高い

紙の契約書は改ざんが比較的容易にできますが、電子契約書は暗号化された電子署名やスタンプを使用することで改ざんが極めて困難となります。

また、紙の契約書は無施錠のキャビネットなどに保管されていると誰でも持ち出すことができてしまいますが、電子契約はセキュリティーが掛かっている状態なので、持ち出すのも困難です。これらは電子契約ならではのメリットと言えます。

まとめ

グローバル化などの社会情勢の変化によって、今後ますます契約書の重要性が高まってきます。同時にIT化が進むことで、電子契約が普及するのも間違いないでしょう。

紙文書を電子文書に、自筆のサインや印鑑を電子署名や電子スタンプに置き換えることで、より効率的に、より安全に契約を交わすことができ、生産性や収益性のアップにもつながります。ぜひ、新しい契約書のカタチとして電子契約を検討してみてください。

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