収入印紙はなんのため?収入印紙が必要となる書類や金額、印紙税の歴史について解説!

2019年10月24日2024年01月12日

収入印紙はなんのため?収入印紙が必要となる書類や金額、印紙税の歴史について解説!

契約書や領収書などの書類を作成するときに貼付する収入印紙。見たことがあるという方も多いかと思います。会社経営者や個人事業主、営業や事務の仕事をされている方なら、実際に書類へ収入印紙を貼ったことがあるという経験があるかもしれません。

そもそもこの収入印紙はなぜ必要なのでしょうか?どんな書類に、いくらの収入印紙を貼付すればよいのでしょうか?今回は収入印紙の基礎知識をお送りします。

収入印紙とは

まずはそもそも収入印紙とは何なのか?基礎の基礎から見ていきましょう。

収入印紙の定義

収入印紙とは「印紙税」という税金や行政手数料を徴収するために使われる証票のことで、郵便切手のような見た目をしています。日本では「印紙をもつてする歳入金納付に関する法律」という法律によって定義されています。

第一条 国に納付する手数料、罰金、科料、過料、刑事追徴金、訴訟費用、非訟事件の費用及び少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第三十一条第一項の規定により徴収する費用は、印紙をもつて、これを納付せしめることができる。但し、印紙をもつて納付せしめることのできる手数料の種目は、各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)が、これを定める。

第二条 前条又は他の法令の規定により印紙をもつて租税及び国の歳入金を納付するときは、収入印紙を用いなければならない。

別表:第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。(納税義務者)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000142

つまり、「国に支払う税金や手数料、罰金などのお金は収入印紙を購入することで納付することができますよ」というのが、この法律の趣旨です。

収入印紙と切っても切れない関係。印紙税とは?

収入印紙が使われる目的で多いのが納税。印紙税は課税文書に印紙税を貼り付けることで納付します。印紙税法2条には以下のように定められています。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。(納税義務者)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=342AC0000000023_20181115_428AC0000000076&openerCode=1#1449

そして、課税物件は以下のものになります。

番号 課税物件
物件名
1 1.不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
2.地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
3.消費貸借に関する契約書
4.運送に関する契約書(用船契約書を含む。)
2 請負に関する契約書
3 約束手形又は為替手形
4 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券
5 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
6 定款
7 継続的取引の基本となる契約書(契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)
8 預貯金証書
9 貨物引換証、倉庫証券又は船荷証券
10 保険証券
11 信用状
12 信託行為に関する契約書
13 債務の保証に関する契約書(主たる債務の契約書に併記するものを除く。)
14 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
15 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
16 配当金領収証又は配当金振込通知書
17 1.売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
2.金銭又は有価証券の受取書で1に掲げる受取書以外のもの
18 預貯金通帳、信託行為に関する通帳、銀行若しくは無尽会社の作成する掛金通帳、生命保険会社の作成する保険料通帳又は生命共済の掛金通帳
19 第一号、第二号、第十四号又は第十七号に掲げる文書により証されるべき事項を付け込んで証明する目的をもつて作成する通帳(前号に掲げる通帳を除く。)
20 判取帳

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=342AC0000000023_20181115_428AC0000000076&openerCode=1#1449

以上の20種類は「課税文書」とも呼ばれます。馴染みが薄いものも多いかと思いますが、一方で比較的私たちが目にする機会がある不動産の売買や賃貸、業務請負などの契約書、保険証券、預金通帳、領収書や受領書といった書類も課税文書に含まれています。

以上のような文書を作成して効力を得るためには税金を支払わなければいけません。仮に収入印紙が貼っていなければ脱税とみなされてしまいます。

税額は課税文書の種類や記載されている金額に応じて異なりますので、都度確認しましょう。具体的にどんな書類でいくら納税しなければいけないかといったことは後ほど解説します。

収入印紙の仕組み

上記でご紹介した課税文書を発行する際には税金を収める必要がありますが、契約書や領収書などを作っている度にお金を支払ったり振り込んだりするのは大変。そこで、収入印紙が活躍するのです。

たとえば、契約書を作成する際に200円分の印紙税が必要な場合を想定してみましょう。200円の収入印紙を契約書に貼付して印影もしくは自筆の署名などで消印をすることで、国税庁に納税したことになります。ちなみに、使い回しを防ぐため消印がないものは無効となりますのでご注意ください。

先ほど、「郵便切手のような見た目をしています」という説明をしましたが、使い方も貼ることで送料を収めたことになる郵便切手に似ています。収入印紙を郵便切手として使えるようにしていた国もあるくらいです。

ちなみに、収入印紙は日本郵便株式会社と総務大臣の認可基準を満たした委託業者が販売しています。具体的には郵便局や法務局内の「印紙売りさばき所」、コンビニで購入可能です。ただし、コンビニでは最小単位である200円分の収入印紙しか取り扱っていないケースが多いので、高額な収入印紙が必要な場合は郵便局に行かれることをおすすめします。

収入印紙が必要になった歴史的背景

業務効率化が図れる収入印紙ですが、意外と長い歴史があります。ここからはちょっとした雑学。収入印紙の歴史について紐解いてみましょう。

収入印紙の起源とは?いつから使われるようになったの?

世界ではじめて収入印紙が導入されたのは1624年と言われています。日本は江戸時代。スペイン船の来航が禁止され、本格的な鎖国時代に突入する時期です。この年にオランダで書類を型押し(エンボス)することで納税を証明するという制度が始まり、これが収入印紙の起源だとされています。

現在のように紙片を貼り付けるスタイルになったのは18世紀末。イギリスで課税対象品に証明書を貼り付けることで物品税を収めたことを証明する方式が導入されました。

日本では1873年(明治6年)に「受取諸証文印紙貼付心得方規則」が制定され、「納税印紙」という制度がスタートしました。当時は民間人が納税印紙を作っていたのですが、1876年(明治9年)には大蔵省の印刷工場(現在の国立印刷局)が完成し、それ以降は国が製造することになりました。

戦後の高度経済成長期真っ只中の1967年(昭和42年)に印紙税法が施行され、現在に至ります。

やはり税金や手数料などをいちいち税務署や役所に収めに行くという手間が省け、業務効率改善の効果が高いことから、収入印紙という制度が世界中に広まったと考えられます。

因子がよく用いられる文書の種類

それでは、具体的にどんな文書が課税文書にあたり、いくら納税をする必要があるのか、見ていきましょう。今回は先ほど挙げた20種類の中でも、特に皆さんが日頃作成する、あるいは受け取る可能性が高いものをピックアップしてご紹介します。

1号文書:不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書

印紙税額一覧表の第1号文書に該当するものです。

具体的には不動産売買契約書や土地建物売買契約書などを指す「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書」、土地賃貸借契約や土地賃料変更契約書、駐車場の賃貸契約書などを指す「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」、金銭借用証書や金銭消費賃借契約書などを指す「消費貸借に関する契約書」、運送契約書や貨物運送引受所などを指す「運送に関する契約書」が挙げられます。

なお、運送に関する契約書には乗車券や乗船券、航空券、荷物の送り状などは含まれません。

印紙税額は以下のとおりです。

記載された契約金額 税額
1万円未満のもの 非課税
1万円以上10万円以下のもの 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円
50万円を超え100万円以下のもの 1,000円
100万円を超え500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

第2号文書:請負に関する契約書

当事者の一方(請負人)が業務を遂行し、もう一方(発注者)がそれに対して報酬を支払うことを約束する契約書を指します。

建設工事や物品の製造など有形なものに対してはもちろんのこと、警備や機械・設備の保守、清掃、インターネットサービス、広告、コンサルなど、無形のサービスに関する契約書にも印紙税の納税が必要です。

具体的には工事請負契約書や工事注文請負書、広告契約書、会計監査契約書などが挙げられます。スポーツ選手や芸能人などの専属契約書なども該当します。

記載された契約金額 税額
1万円未満のもの 非課税
1万円以上10万円以下のもの 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円
50万円を超え100万円以下のもの 1,000円
100万円を超え500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

第7号文書:継続的取引の基本となる契約書

特定の相手と継続的に取引を行う際に交わす契約書です。具体的には売買取引基本契約書や下請基本契約書、代理店契約書、金融や証券取引、保険に関する基本契約書などが挙げられます。

こちらは取引額がその都度変更になるため、1号文書や2号文書のような記載金額に応じた課税額は定められていません。1通につき一律4,000円の印紙税を収めることになっています。

ただし、契約期間が3ヶ月以内でかつ更新の定めのないものは非課税です。

第17号文書:金銭又は有価証券の受取書

商品やサービスを販売した際の受取書や領収書、レシートなども課税文書となります。税額は「売上代金に係る受取書」と「売上代金以外の受取書」という区分で分けられています。

売上代金に係る受取書とは、資産を譲渡もしくは使用させること、あるいは役務(サービス)を提供する代わりに報酬を受け取った際に発行する受取書のこと。つまり普通に商品やサービスを販売して売上を得たようなケースに該当します。以下のような税額となっています。

記載された契約金額 税額
5万円未満のもの 非課税
5万円以上100万円以下のもの 200円
100万円を超え200万円以下のもの 400円
200万円を超え300万円以下のもの 600円
300万円を超え500万円以下のもの 1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 2,000円

売上代金以外の受取書は担保物や保険金、借入金、割戻金、損害賠償など、対価性のない金銭または有価証券の受領をしたケースを指します。こちらは5万円未満のものは非課税、5万円以上のものは一律で200円です。

記載された契約金額 税額
5万円未満のもの 非課税
5万円以上のもの 200円

国税庁のホームページで要チェック

先ほど課税物件の一覧表でもご紹介したとおり、課税文書にはさまざまな種類があり、それぞれ税額も異なります。国税庁のホームページに詳細が記載されているので、チェックしてみてください。

印紙税の税収

契約書や領収書を発行したときに課される印紙税は、いったいどれくらいの税収になるのでしょうか?国税庁では年度ごとの『租税及び印紙収入予算の説明』をホームページで公開しています。

ちなみに、印紙税の税収は正確には「印紙収入」と言います。印紙税が課せられるのは課税書類を発行するタイミングなので、収入印紙の購入は納税にはあたりません。ですから、印紙税に関しては「税収」ではなく、「印紙収入」と表現されるのです。しかし、国にお金が入るのは印紙税を購入するタイミングなので、実質的には「収入=税収」と考えることができます。

さて、国税庁が公開しているデータによると、1989年は約1.7兆円の印紙収入がありました。以降2000年までは1.5~2兆円の範囲で推移しています。

しかし、2003年を境に印紙収入は低下。毎年1兆円を推移するようになります。令和元年度(2019年度)は一般会計歳入(国の収入)として1兆490億円の予算が計上されています。

ちなみに、印紙税は国に収める税金なのですが、他にも所得税や法人税、消費税などが国税として挙げられます。令和元年度の国の一般会計歳入全体の額は101兆円ですから、国の収入のうち1%ほどが印紙収入ということになります。

公債金(国の借金)が32兆円、所得税が19兆円、消費税が19兆円、法人税が12兆円なので、他の税金と比べると税収の額は少ないと言えます。ただし、割合が低くても国を支え得ている重要な収入には違いありません。

収入印紙デザイン変更

収入印紙のデザインは度々変更されてきて、直近では2018年7月1日に形式改正が行われました。

見た目の変更のほか、特殊発光インキやマイクロ文字着色繊維、透かし入りの用紙を使用して、より偽造がしにくいように改良されています。

200円券に関しては見る角度によって光沢模様が現れ、特殊レンズを重ねると「200」という文字が見えるような技術を採用。300~600円券は専用シートを重ねると模様が消えるインクを、1,000円以上の券は見る角度を変えることで複数の模様が現れる技術を使っています。

また、従来あった1~120円の券種は廃止となり、200円券が最小単位となったのも大きな変更点です。

なお、改正前に購入した旧デザインの収入印紙は現在も使用することができます。

収入印紙と印紙税の今後

収入印紙のデザインが変更されたこと、今現在でも紙の契約書で契約を交わしている企業が多く、1兆円以上の印紙収入が国にあることから、収入印紙という制度自体が当面なくなることはないでしょう。

ただし、昨今では紙による契約ではなくインターネットを介してパソコンやスマホなどの端末から契約を締結する「電子契約」が普及してきました。現状では電子契約に対しては印紙税が課税されていません。電子契約が普及するのに伴って今後まずます国の印紙収入が減少することになりそうです。

まとめ

収入印紙という制度は無くならないものの、印紙税という制度自体が大きく変わる可能性は十分に考えられます。電子契約であっても印紙税を課税できるよう法改正がなされ、電子契約向けに何らかの課税システムが構築される可能性も十分あり得るでしょう。

今後、収入印紙という制度や印紙税の課税方式がどうなるのか、注目していきたいと思います。

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